「精神科医だけど質問ある?」>>1によるブログ

2ch「精神科医だけど質問ある?」スレ主が、過去の質問をもとに"よくある質問集"を作ります

ご案内(はじめに) [最新記事は↓を御覧ください]

2chで不定期に「精神科医だけど質問ある?」スレを立てている>>1のブログです。VIP+で年末年始を中心に不定期でやっております。2016年以降は◆AMAPSYMEDPA1 のトリップを使用しています。回を重ねるにつれ頻出の質問やループする話題が出てきたので、外部にFAQ的なものを作りたいと思いたちはじめました。最近は、質問以外でも気になった話題について書いてます。以下、過去に>>1が立てたスレの一覧です。*1 もし遭遇することがありましたらよろしくお願い致します。

13/12/31-14/02/17 [1000] 精神科医だけど質問ある? (VIP+)
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1388476407/
14/02/16-14/04/17 [666] 精神科医だけど質問ある?2 (VIP+)
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1392537849/
15/06/21-15/06/22 [307] 精神科医だけど質問ある? (VIP)
http://viper.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1434875367/
15/11/21-15/11/21 [58] 精神科医だけど質問ある? (VIP)
http://vipper.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1448093560/
15/11/21-16/01/07 [1000] 精神科医だけど質問ある? (VIP+)
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1448115923/
16/07/29-16/09/25 [986] 精神科医だけど質問ある? (VIP+)
http://hayabusa8.5ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1469798291/
17/02/10-17/05/15 [804] 精神科医だけど質問ある? (VIP+)
http://hayabusa8.5ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1486733548/
18/08/05-19/01/16 [1000] 精神科医だけど質問ある? (VIP+)
http://hayabusa9.5ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1533459098/

*1:とりあえず見つけられた分だけなので、他にもあったかもしれませんが

被虐待児と児童相談所と精神科医のビミョウな関係

児童虐待」と「働かない児童相談所」という話題が、ここ数年、定期的に出ては消えていってるように感じる。特に今回の千葉県野田市立小4児童虐待死事件は、いろいろと突っ込みどころが多くてワイドショー向きなところがあり、ネット界隈でもずいぶん話題になっているようだ。ちょうど良い機会なので(?)、精神科医からみた児童相談所、および、被虐待児童と児童相談所精神科医療のなんとも微妙な関係について書いてみたいと思う。ただ今回の記事の内容は、完全に私の私見である。精神科医の中でも、別の考えをする先生も多いと思うし、私の偏見もいくらか入っていると思うので、それを承知の上でご覧頂きたい。
www.nikkansports.com

児童相談所はだいたい無能である。

まずネット上で散見される「児童相談所=無能」説について。これは概ね正解だと思う。私自身、児童相談所のトンデモナイ対応の数々を直にみてきた。(以下、個人の特定を防ぐために詳細については若干改ざんしている)
あるとき私は、現在病院に入院中の児童が長年、実の両親から虐待を受けていることを本人から告白された。私はすぐに最寄りに児童相談所「患者さんの一人が、両親から虐待を受けていることが分かりました、つきましては児童相談所の介入をお願いします」と通告を行った。受けていたという虐待の内容についても、本人の申し出を元にかなり詳細に報告を行った。ところが、その後数日たっても全く音沙汰がない。疑問に思って再度児童相談所に電話し、いつ調査訪問に来るのかと訪ねたら、訪問の予定は無いという。

・・・この間いろいろやり取りがあったのだが、児童相談所の言い分はこうだ。

「実の両親に虐待を受けている」という電話を受けた担当者は、「実の両親に電話で聞き取りを行い」、「虐待は無かったと判断した」。 だから本人への聞き取りも不要だ、と。

・・・私自身、児童相談所と本格的に関わるのはその時が初めてだったので、ずいぶん衝撃を受けたものである。いろいろ突っ込みどころは多いと思ったが、少し考えただけでも、以下の3点は致命的である。

  • 虐待をしている張本人にいきなり電話したのか?
  • 被害児童がいるのに、加害者の「やってない」をそのまま信じたのか?
  • 被害児童には会ってすらいないまま結論を出すのか?

当時私もかなり怒って、「虐待の通告に対して、本人に会うことすらしないのか?」と問いただした所、次に児相は、「虐待の通告は受けていない」と言い出した。

これも回りくどい言い訳があったのだが、かいつまむと児相にとって先の電話は、「育児の相談を受けただけ」で、「虐待の通告は受けていない」というのだ。

児童相談所はお役所であり、お役所は事なかれ主義である。

そこまで徹底して仕事したくないのかと。お役所仕事、事なかれ主義もここまで貫けば立派である。
もちろん、現場の相談員や福祉士の中には高い専門性とスキルを持ったスタッフがいることは私も知っている。しかし、いざ虐待が発生した場合の介入や一時保護といった判断には、現場だけではなく上役の判断が必要になる。しかしお役所の宿命として、そのポジションには大抵、児童福祉への熱意もなければ興味すら無い、数年間の腰掛けで赴任して、「ただ何事も無く」任期を終えることを期待している役人が座っている
彼らがいる限り、いくら相談員の専門性を高めるとかまっとうな努力を積み重ねたことで、児童相談所はこれから先も、まともに機能することは無いと断言する。

児童相談所精神科病院による、被虐待児の「押し付けあい」

上記のようなケースはまぁ論外としても、実際に相談の俎上に上がってなお、精神科医療との兼ね合いで微妙なことになるケースがある。それは「精神科的な病名がついてしまう」がために、全ての問題を精神障害のせいにされ、児童相談所が介入や保護を拒否するケースである。
精神科で扱う障害の一つに「愛着障害」と呼ばれるカテゴリーがある。これはざっくり言えば、幼少期の虐待などが原因となって対人関係に関する様々な問題を抱える子たちなのだが、この類の子どもたちがいざトラブルになると、児童相談所精神科医療機関の間で「押し付けあい」になることが少なくない。つまり、病院は「虐待が原因なのだから児相で保護しろ」といい、児相は「精神障害者なのだから病院に入院させるべきだ」という

ただこれについては、私の愛着障害に関する知識不足ゆえ、もしかすると児童精神の専門病院に言わせれば病院が担うべき役割もあるのかもしれない。ただし当時私の務めていた病院はごく普通の精神病院だったし、そんな児童精神の専門病院は全国に数えるほどしか無く、日々全国で起こる虐待事例に対応できるような現実的な対応でないことだけは確かである。そしてこのたぐいの押し付け合いは、おそらく全国で現在進行系に起こっており、早急に何らかの対策が必要なものである。

次の標的は認知症治療薬?ベンゾジアゼピンバッシングに続く動き

マスコミや患者団体の攻撃対象が、徐々に認知症治療薬に移ってきているのを最近肌身で感じております。
従来より不適切な使用についての懸念が示されていたベンゾジアゼピン睡眠薬抗不安薬について、2016年ころから当局の規制が厳しくなってきているのは記憶にあたらしいところですが、どうもこの1年ほど、これまでベンゾジアゼピンの"薬害"を特集していた新聞や雑誌社が、認知症治療薬を攻撃対象にすることが増えているようです。そうした記事を持参されるご家族が増えているのを感じております。要するに、認知症で治療薬を処方されている患者様のご家族が、「症状が悪いのはこの薬飲んでるせいじゃないのか!?」といって、中止を求めてくるケースですね。また、今年6月に出た以下のニュースも記憶に新しいところです。
news.yahoo.co.jp

(なお認知症といってもいろいろな種類がありますが、ここでは、最も頻度の多いアルツハイマー認知症を想定しています。認知症治療薬というのは、主にアルツハイマー認知症に対する治療薬の総称で、具体的には以下の4種類。)

  • コリンエステラーゼ阻害剤
    • ドネペジル(アリセプト™)
    • ガランタミン(レミニール™)
    • リバスチグミン(リバスタッチ™、イクセロン™)
  • NMDA受容体拮抗薬
    • メマンチン(メマリー™)

症状の悪化は薬のせい?

前提として、認知症治療薬(以下、治療薬と表記)を処方されている患者様は大半がアルツハイマー認知症(以下、AD)です。ADは慢性進行性の病気、つまり「症状は自然に進行していく」病気です。そしてこれらの治療薬は「症状の進行を遅らせる」ことを期待して投与されるものであって、症状を消す薬ではないし、症状を完全にストップするほどの力が無いことは既に分かっている薬です。つまり逆の言い方をすれば、「治療薬を飲んでいる患者は、かならず症状が悪化する」のです。薬のせいではなく、もとの病気のせいで、です。じゃぁそんな薬使うことにどれだけ意味があるのか、と疑問に思う向きもあるでしょうが、それは大規模な治験で確認されていることですので詳細は省きます。ただ一つ重要なことは、治験で認められた有効性と、患者や家族が考える有益性は必ずしも一致しないということです。

家族の期待する有効性と、医療の考える有効性は異なる

これは架空の例ですが、たとえば『この薬を認知症の方に飲ませれば、日常の物忘れ自体は改善しませんが、寝たきり状態になるのを平均で5年先延ばしに出来ます!』という薬があったとして、この薬の効果をどう捉えるでしょうか?おそらくご家族の多くは、日常の物忘れが良くならない上に、5年という微妙な延長期間ですので、あまり良い評価はいただけないものと思います。ですがこれ、医療や福祉行政の面から見れば、寝たきり状態の介護期間が5年減らせるのだとすればそれだけで莫大な社会的費用の軽減になりますから、この薬は超優秀な薬、という評価が下るでしょう。一つ、認知症治療薬に対する批判の背景に、こうした、『家族が期待するような効果を与えられていない』という現在の治療薬の限界を踏まえるべきでしょう。

家族のクレームが本人の治療機会を奪う。

上で述べたとおり、治療薬を飲んでる方はみな症状は徐々に悪化していきますので、それを「薬のせい」と言われてしまうと、個別のケースでは医師の側としても、絶対に違うぞと明快に示すことが難しい。知り合いの先生方にそういうときの対応をきいてみたところ、医学的に見て薬の影響は低いと考えていたとしても、家族を説得するのが面倒だとか家族に不信感を持たれるのが嫌だという理由で、家族が嫌がるときはスパッと切ってしまってる先生が多いようです。そういった先生は、家族からは「理解のある名医」と呼ばれるのかもしれませんが、長期的に見れば本人が本来受けられる治療の機会を逸しているわけで、到底良い対応とは言えますまい。

本当の問題は、専門外の医師による処方?

とはいえ、雑誌などで指摘されている通り、認知症治療薬は意外と副作用の出現率が高い薬であるのは事実なのです。認知症を日常的に見ている先生はそうした副作用にも適切に対応していると思いますが、一方でーベンゾジアゼピン批判のときと同じですが―認知症を真面目に診る気がない専門外のクリニックなどが「とりあえず」で漫然と治療薬を出しているケースには、対応がまずいケースが多いように思います。最近私がみた症例ですと、消化器内科のクリニックさんから紹介されてきた「食欲が落ちている90代女性、精神的なものではないか」という方。一見してお元気そうなので年齢的なものかと思ったのですが、お薬手帳をみますと数ヶ月前からさり気なくドネペジルが開始されてるのを発見しまして、そちらを止めてみたところ食欲が劇的に改善したケースとか・・・消化器内科とはなんだったのか。(※コリンエステラーゼ阻害薬では消化器系の副作用が最も多くみられます)
しかも同院からの紹介状には認知症の「に」の字も無く、そちらの先生が、ドネペジルによる消化器症状のリスクをまったく知らないであろうことが容易に想像できます。さらに言えばその方、日常的な物忘れこそありますが、独居で買い物から家事全般を見事にこなしてる方で、どうみても認知症には見えない方です。ご家族におうかがいしたところ、どうも、数ヶ月前に家族が受診に付き添った時「最近、人の名前を忘れることが増えた」とご家族が述べたためにドネペジルが開始されたようなのですが・・・人の名前をど忘れするだけで認知症と診断するのが不適切であることは言うまでもありません。ただ、このクリニックが極端というわけではなく、この手のケースは私個人だけでもしばしば目にします。

結局、先のベンゾジアゼピン系薬剤のときと同じで、認知症治療薬も、薬の評判を貶めてるのは薬の勉強もしないで適当に使ってる専門外の医師だ、という結論に私の中では至りました。
クリニックの先生方には、専門外の薬を出すことに関して、もうちっと慎重さと謙虚さを持ってほしいものです。それが足りないから、こう無駄な規制が増えて・・・

専門家が匙を投げたー青森「いじめ自殺」審議会の闇。

まさに空いた口が塞がらない。あまりにお粗末な「審査会」に、専門家もついに匙を投げたのだ。

これだけみると「やっぱりイジメはいけないね」というただの記事なのだが、実はこの事件の審査会には壮大な闇がある。
こちらの記事を御覧いただきたい。約1年前の記事である。


 昨年8月に青森市立中2年の葛西りまさん=当時(13)=がいじめを訴え自殺した問題で、遺族は23日、事実関係を調査している審議会の一部委員の解任などを求める要望書を市教育委員会に提出した。
 要望書は、審議会がまとめた報告書原案が、りまさんを「思春期うつ」だったと認定した点を「思い込みとしか言いようのない判断」と指摘。精神科医ら委員2人を解任し、学校の対応と自殺の因果関係について再調査するよう求めた。
 父の剛さん(39)は「私たちに都合の良い報告書を望んでいるのではない。ただ真実を知りたいだけだ」と話している。
 審議会は今月11日、いじめがあったと認めた上で、自殺との因果関係は「解明できない」との報告書原案を遺族に示し、「納得できない」と遺族が反発していた。青森市の小野寺晃彦市長も20日に委員を入れ替え、調査をやり直させる意向を表明した

(フォント・文字色は著者編集)

「いじめはあった」。しかし「自殺との因果関係は解明できない」。冷静に考えれば至極当然の調査結果である。
また、思春期うつ病という認定は、仮にもその分野の専門家が何人も頭を突き合わせて出した結論であり一定の信頼が置けるだろう。
それを、当事者の一方である家族の抗議を受け、委員の入れ替えという荒業をもって、強引に出したのがこの結論なのである。

専門家は2ヶ月前に匙を投げていた。

で専門家が匙を投げたとは何かと言うと、実は今年6月「日本児童青年精神医学」という思春期メンタルヘルスの専門学会が、こんな声明を発表しているのである。

日本児童青年精神医学会 2018.06.17「児童・生徒のいじめによる被害や自殺等の重大事態に関する第三者委員会」への委員の推薦について

同学会は全国の「いじめ問題」で調査委員会が開かれる際、専門家の推挙を行ってきた経緯があるのだが、同学会は、別記の条件を満たさない限り、今後委員の推薦は行わないと表明した。
文面は上記リンクから全文が読めるのでご参照いただきたいが、あれこれ回りくどく書いてあるけど結論はシンプルである。
要約すると、

  • 委員会が中立であること
  • 委員会の決定が不満でも、特定の委員個人を批判したり委員の入れ替えを行わないこと
  • 委員会について市長(首長)が責任を持つこと

どうみてもこれは、

  • "被害者"遺族に一方的に肩入れして
  • 都合の悪い意見を述べた委員を攻撃して罷免し
  • まるで他人事のように振る舞う青森市の小野寺晃彦市長

に対する、全力の皮肉であろう。

私はこの声明の作成には関与していないが、はじめて読んだときまずこの事件を思い出し、そして関係者各位の悔しさが滲む声明に涙した。

こんな場末のブログが書いても影響力がないことはわかってるが、せめて青森の一件に携わった専門家各位へ、ここで改めて敬意を表したい。
そして青森市の小野寺晃彦市長をはじめとした立場のある方々には、くれぐれも理性的な対応を求めたい。

精神科医は黙って殴られてろと?-「精神科医にも拳銃」報道

精神科病院協会のお偉方が、機関紙で「精神科医にも拳銃を持たせてくれ」という部下の発言を取り上げたことについて、毎日新聞がこれを叩いている。

この意見は、現場の感覚としては特に違和感なく受け入れられるもので、おそらく少なくない精神科医療従事者が抱いている感想だろうと思います。

精神科医療は、治安維持の役割を期待されている

精神科医療は好む好まざるにかかわらず、社会の治安維持としての性質を持ち合わせています。それは「他人に害を及ぼすおそれがある」者を強制入院させる措置入院の条項を見れば明らかです。もちろんこれは、巡り巡って患者本人が犯罪を犯すという不利益を被ることを回避するためのものですが、それを理解しているのは精神科医療に関わる者くらいでしょう。最近ですと、相模原の知的障害者施設の襲撃犯に措置入院歴があると報道されたとき『どうして退院させた』的な意見が広く報道されておりましたが、これは国民が精神障害者に対する抑止力を、精神科医療に求めていることに他なりません。
相模原障害者施設殺傷事件 - Wikipedia

精神障害者は危険」は誤り、しかし「危険な精神障害者」は存在する

私自身、診察室で患者から刃物を向けられたことは1度や2度ではありません。素手で殴りかかられるくらいは割と日常的風景です。基本的に診察室は密室です。患者と医師の2人しかいません。一応、緊急時のアラームボタンはありますが、押したところで目の前の患者が切りつけてくる方が早いです。
しかしそんな相手でも、患者様は患者様というのが今の日本の医療です。こちらが少しでも暴力的な手段(たとえば椅子を投げつけてそのスキに逃げるとか)を取ると、あとからそれが医療機関として"不適切な"行動として扱われてしまうのが現状です。

医療従事者を守るという視点を持って欲しい

問題は拳銃という手段ではなく、「医療従事者を守る」という視点を少しでも持って欲しいってことです。実際、警察官などにくらべれば我々が遭遇する危機なんてたかが知れてますので、別に拳銃じゃなくてもいいのですよ。催涙スプレーでもいいし、他に何か相手をひるませる手段があるならそれで構いません。我々にも何か抵抗手段が欲しい、自衛することを堂々と認めて欲しい。
モンスターペイシェントの問題でも同じですが、『医療従事者は黙って殴られてろ』的な風潮には我慢ならない。ただそれだけです。

参考)精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

(警察官の通報)
第二十三条 警察官は、職務を執行するに当たり、異常な挙動その他周囲の事情から判断して、精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められる者を発見したときは、直ちに、その旨を、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければならない。

(申請等に基づき行われる指定医の診察等)
第二十七条 2 都道府県知事は、入院させなければ精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあることが明らかである者については、第二十二条から前条までの規定による申請、通報又は届出がない場合においても、その指定する指定医をして診察をさせることができる。

(判定の基準)
第二十九条 都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

最近こんな記事ばかりでスイマセン、ニュースを見ていて、これは書いておかねばと思ったもので。
もうちょっと真面目に病気の記事も更新せねば・・・

子宮頸がんワクチン問題に取り組む村中医師、ジョン・マドックス賞を受賞

子宮頸がんワクチンの安全性について啓発活動を続けてこられた村中璃子医師が、科学誌『ネイチャー』の主催するジョン・マドックス賞を、日本人として初めて授賞されました。
一方、ワクチンを危険な悪者と囃し立てる"被害者"団体の奇天烈な記者会見をこぞって取り上げた大手マスコミ(朝日・読売・毎日)はこの出来事をスルー。偏向報道と指摘されるのもやむを得ないように思います。

それと関連して、過去記事をすこしだけ更新しました。

精神科医に「向いている人」「向いていない人」

「どんな人が精神科医になるのに向いているのか?」「精神科医に必要は適正は何か?」・・・というたぐいの質問をしばしばいただきます。それこそ精神科医の数だけ答えがある問題だと思いますが、私が考えるのは以下のとおりです。

「私は◯◯だけど精神科医に向いているか?」という質問をよくいただくのですが、〇〇に、到底"向いていない"と思われる理由を挙げてこられる方が多いので、先に私が考える「不向きな人」から先に説明したいと思います。

精神科医に「不向きな人」

人付き合いが苦手(苦痛)な方

「チーム医療」という言葉が強調されるようになって久しいですが、精神科医のお仕事というのは本当に多くの職種のスタッフが関わっています。コミュニケーション能力が重要なのは大抵の仕事に言えるでしょうが、とりわけ精神科医療では、患者様の生活全般を支えるという使命のために、関わる職種の広さでいえば他の科の比ではありません。
例えば在宅の認知症患者様一人を支えることを考えても、ざっと思いつく職種だけでも、精神科医・内科医・(病院)看護師・作業療法士精神保健福祉士・介護支援専門員・介護福祉士訪問看護などの医療スタッフに加えて、日常生活を支える患者の家族や親族、他にもこれらの調整を支えてくれる地域自治体(市役所など)の事務職員などなど――非常に多数の関係機関や専門スタッフが関わっています。精神科医はその中心として彼らをまとめ上げて、支援のプランを組み立てていくことが求められます。
そうした業務を行う中で、人付き合いが苦手であることはかなり負担になると思いますし、苦手なままでは済まされない問題でもあります。

自身が精神障害、メンタル面の問題を抱えている方

特別向いていないというわけでも無いでしょうが、少なくとも精神障害を抱えていることが"有利に働くことは無い"くらいの意味です。これについてはスレでお答えするたびに大いにバッシングを受けるのですが、事実だと思います。
精神科を目指しているという学生の「自分も精神障害を抱えているので、同じような患者さんを助けてあげたい」とか、「(そうした経験があるから)自分は共感力が高い」「病気の人の気持ちがよくわかる」というアピールをよく見かけます。こころざしは立派だといつも感心していますが、残念ながらそれは誤りです。自身がメンタルの問題を抱えているからと言って、患者の気持ちが分かることはありません。
人間は100人いれば、その考え方も感じ方も千差万別です。あなた1人の経験はあなた固有のものであって、100人の患者さんにそのまま当てはめることは出来ません。もしかしたら100人に1人くらいは自身の経験とごく類似した考え方をする患者に遭遇するかもしれませんが、精神科医は残り99人にも同じように対応できなければいけません。無理に自身の経験を当てはめようとすれば、必ず致命的な誤りを犯します。
またそもそも、精神科医が扱う病気の種類は膨大です。主なものだけで数十種類はあります。よしんば自身の経験が一つの病気の対応について何か良い影響があるとしても、それは精神科医としての仕事のごく一部に過ぎません。

あとは私の個人的な経験則ですが、この手の『想いが強すぎる』方は、自分は患者さんの気持ちがわかるという勘違いから、ろくに勉強をしないまま、我流のへんてこな治療を続けてしまう人が多いように思います。ひどい場合だと、正しい治療を知っているのにも関わらず、敢えてそれを外して「自己アピール」をする人さえいます・・・若干の偏見が入っているかもしれませんが。当たり前ですが、精神科の治療にもセオリーはあります。フィーリングや我流は許されません。

"霊感がある"方、"霊能力をお持ち"の方など

いわゆるスピリチュアルな能力に長けているという方について。霊感や霊能力というものがどのようなものなのか私もよくわかっておりませんが、精神科医療はあくまで「医学」という学問の延長ですから、霊感や霊能力は使いませんし、使ってはいけません。
実際世の中には、こうした能力を活かして、我々が"精神疾患"と呼んでいる状態を改善させようとする方もおります(いわゆる祈祷師や霊媒師)。ただしそれは医療では無いので、精神科医の仕事ではありません。
そういう意味で、「不向き」なわけではありませんが、少なくとも"霊感"や"霊能力"は精神科医の仕事の助けにはなりません。
仮にそうした能力を持っていたとしても、精神科医としてのお仕事は、あくまで霊感や霊能力抜きで行う必要があります。

精神科医に「向いている人」

逆に、精神科医に向いていると思うのはこんな人です。

地道な勉強を続けることができる人

精神科医というのは決して、何か特殊な能力をもった人だけが出来る仕事ではない、ということです。何か読心術のような超能力めいたものを身に着けた姿を想像されることが多いのですが、誰もそんな特殊能力は持っておりませんし、そんなものは必要ありません。
精神科医の仕事は「臨床医学」という学問の延長であり、「真面目に勉強さえすれば、だれでも精神科医になれる」ものであるし、実際そうでなくてはいけません。

なので精神科医になるのに、特別な素養や能力は必要ありません。しかし医学研究は日進月歩の分野ですので、たとえ学生時代に勉強したからと言って足りるものではなく、生涯にわたって情報のアップデートを続けていかなくてはいけません。こうした地道な勉強を続けていくことができるかどうかが、一番の「適性」ではないかと思います。(全ての科の医者に言えることですが)

ココロだけでなく、カラダの病気にも興味を持てる人

精神科医というと、内科や外科などの医者とは少し異質なイメージを持たれることが多いですが、どの科の医師であっても、免許をとるまではみんな一緒に、一般的な内科学・外科学など全身の病気について勉強しています。(逆に内科や外科の先生も、精神科の研修を一定期間受けています)
実際、精神科医も普段の仕事の中で、カラダの病気(内科的な病気など)を日常的に扱う必要があります精神疾患は「脳の病気」と考えられていますが、脳もカラダを構成するパーツの一部ですので、カラダの別の病気から影響を受けることもあるし、逆に影響を及ぼすこともあるからです。常に全身の病気について考えながら治療を行う必要があり、時にはその治療も行わなければなりません。
あるいは、精神科の専門病院というのはたいてい精神科医しかおりませんので、入院している患者さん達については、そのカラダにおこるあらゆる病気を、精神科医が責任をもって治療する必要があります。(あたりまえですが、精神疾患の患者さんもカラダの病気にかかります。)

そんな事情から、カラダを含めたあらゆる病気に興味を持てる方が精神科医として向いているし、逆に「私はココロの問題にしか興味ないんだ、カラダの病気なんか扱いたくないよ!」という方は精神科医には向いていません
そういった方は、心理学を学ばれるとか、心理士を目指すのが良いのではないかと思います。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
雑記:久しぶりの更新です。リアルお仕事が多忙で更新滞っておりすいません。例年だと年末年始に1本スレ立てすることが多いんですが・・・あまり期待せずにお待ち下さい。