「精神科医だけど質問ある?」>>1によるブログ

2ch「精神科医だけど質問ある?」スレ主が、過去の質問をもとに"よくある質問集"を作ります

専門家が匙を投げたー青森「いじめ自殺」審議会の闇。

まさに空いた口が塞がらない。あまりにお粗末な「審査会」に、専門家もついに匙を投げたのだ。

これだけみると「やっぱりイジメはいけないね」というただの記事なのだが、実はこの事件の審査会には壮大な闇がある。
こちらの記事を御覧いただきたい。約1年前の記事である。


 昨年8月に青森市立中2年の葛西りまさん=当時(13)=がいじめを訴え自殺した問題で、遺族は23日、事実関係を調査している審議会の一部委員の解任などを求める要望書を市教育委員会に提出した。
 要望書は、審議会がまとめた報告書原案が、りまさんを「思春期うつ」だったと認定した点を「思い込みとしか言いようのない判断」と指摘。精神科医ら委員2人を解任し、学校の対応と自殺の因果関係について再調査するよう求めた。
 父の剛さん(39)は「私たちに都合の良い報告書を望んでいるのではない。ただ真実を知りたいだけだ」と話している。
 審議会は今月11日、いじめがあったと認めた上で、自殺との因果関係は「解明できない」との報告書原案を遺族に示し、「納得できない」と遺族が反発していた。青森市の小野寺晃彦市長も20日に委員を入れ替え、調査をやり直させる意向を表明した

(フォント・文字色は著者編集)

「いじめはあった」。しかし「自殺との因果関係は解明できない」。冷静に考えれば至極当然の調査結果である。
また、思春期うつ病という認定は、仮にもその分野の専門家が何人も頭を突き合わせて出した結論であり一定の信頼が置けるだろう。
それを、当事者の一方である家族の抗議を受け、委員の入れ替えという荒業をもって、強引に出したのがこの結論なのである。

専門家は2ヶ月前に匙を投げていた。

で専門家が匙を投げたとは何かと言うと、実は今年6月「日本児童青年精神医学」という思春期メンタルヘルスの専門学会が、こんな声明を発表しているのである。

日本児童青年精神医学会 2018.06.17「児童・生徒のいじめによる被害や自殺等の重大事態に関する第三者委員会」への委員の推薦について

同学会は全国の「いじめ問題」で調査委員会が開かれる際、専門家の推挙を行ってきた経緯があるのだが、同学会は、別記の条件を満たさない限り、今後委員の推薦は行わないと表明した。
文面は上記リンクから全文が読めるのでご参照いただきたいが、あれこれ回りくどく書いてあるけど結論はシンプルである。
要約すると、

  • 委員会が中立であること
  • 委員会の決定が不満でも、特定の委員個人を批判したり委員の入れ替えを行わないこと
  • 委員会について市長(首長)が責任を持つこと

どうみてもこれは、

  • "被害者"遺族に一方的に肩入れして
  • 都合の悪い意見を述べた委員を攻撃して罷免し
  • まるで他人事のように振る舞う青森市の小野寺晃彦市長

に対する、全力の皮肉であろう。

私はこの声明の作成には関与していないが、はじめて読んだときまずこの事件を思い出し、そして関係者各位の悔しさが滲む声明に涙した。

こんな場末のブログが書いても影響力がないことはわかってるが、せめて青森の一件に携わった専門家各位へ、ここで改めて敬意を表したい。
そして青森市の小野寺晃彦市長をはじめとした立場のある方々には、くれぐれも理性的な対応を求めたい。

精神科医は黙って殴られてろと?-「精神科医にも拳銃」報道

精神科病院協会のお偉方が、機関紙で「精神科医にも拳銃を持たせてくれ」という部下の発言を取り上げたことについて、毎日新聞がこれを叩いている。

この意見は、現場の感覚としては特に違和感なく受け入れられるもので、おそらく少なくない精神科医療従事者が抱いている感想だろうと思います。

精神科医療は、治安維持の役割を期待されている

精神科医療は好む好まざるにかかわらず、社会の治安維持としての性質を持ち合わせています。それは「他人に害を及ぼすおそれがある」者を強制入院させる措置入院の条項を見れば明らかです。もちろんこれは、巡り巡って患者本人が犯罪を犯すという不利益を被ることを回避するためのものですが、それを理解しているのは精神科医療に関わる者くらいでしょう。最近ですと、相模原の知的障害者施設の襲撃犯に措置入院歴があると報道されたとき『どうして退院させた』的な意見が広く報道されておりましたが、これは国民が精神障害者に対する抑止力を、精神科医療に求めていることに他なりません。
相模原障害者施設殺傷事件 - Wikipedia

精神障害者は危険」は誤り、しかし「危険な精神障害者」は存在する

私自身、診察室で患者から刃物を向けられたことは1度や2度ではありません。素手で殴りかかられるくらいは割と日常的風景です。基本的に診察室は密室です。患者と医師の2人しかいません。一応、緊急時のアラームボタンはありますが、押したところで目の前の患者が切りつけてくる方が早いです。
しかしそんな相手でも、患者様は患者様というのが今の日本の医療です。こちらが少しでも暴力的な手段(たとえば椅子を投げつけてそのスキに逃げるとか)を取ると、あとからそれが医療機関として"不適切な"行動として扱われてしまうのが現状です。

医療従事者を守るという視点を持って欲しい

問題は拳銃という手段ではなく、「医療従事者を守る」という視点を少しでも持って欲しいってことです。実際、警察官などにくらべれば我々が遭遇する危機なんてたかが知れてますので、別に拳銃じゃなくてもいいのですよ。催涙スプレーでもいいし、他に何か相手をひるませる手段があるならそれで構いません。我々にも何か抵抗手段が欲しい、自衛することを堂々と認めて欲しい。
モンスターペイシェントの問題でも同じですが、『医療従事者は黙って殴られてろ』的な風潮には我慢ならない。ただそれだけです。

参考)精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

(警察官の通報)
第二十三条 警察官は、職務を執行するに当たり、異常な挙動その他周囲の事情から判断して、精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められる者を発見したときは、直ちに、その旨を、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければならない。

(申請等に基づき行われる指定医の診察等)
第二十七条 2 都道府県知事は、入院させなければ精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあることが明らかである者については、第二十二条から前条までの規定による申請、通報又は届出がない場合においても、その指定する指定医をして診察をさせることができる。

(判定の基準)
第二十九条 都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

最近こんな記事ばかりでスイマセン、ニュースを見ていて、これは書いておかねばと思ったもので。
もうちょっと真面目に病気の記事も更新せねば・・・

子宮頸がんワクチン問題に取り組む村中医師、ジョン・マドックス賞を受賞

子宮頸がんワクチンの安全性について啓発活動を続けてこられた村中璃子医師が、科学誌『ネイチャー』の主催するジョン・マドックス賞を、日本人として初めて授賞されました。
一方、ワクチンを危険な悪者と囃し立てる"被害者"団体の奇天烈な記者会見をこぞって取り上げた大手マスコミ(朝日・読売・毎日)はこの出来事をスルー。偏向報道と指摘されるのもやむを得ないように思います。

それと関連して、過去記事をすこしだけ更新しました。

精神科医に「向いている人」「向いていない人」

「どんな人が精神科医になるのに向いているのか?」「精神科医に必要は適正は何か?」・・・というたぐいの質問をしばしばいただきます。それこそ精神科医の数だけ答えがある問題だと思いますが、私が考えるのは以下のとおりです。

「私は◯◯だけど精神科医に向いているか?」という質問をよくいただくのですが、〇〇に、到底"向いていない"と思われる理由を挙げてこられる方が多いので、先に私が考える「不向きな人」から先に説明したいと思います。

精神科医に「不向きな人」

人付き合いが苦手(苦痛)な方

「チーム医療」という言葉が強調されるようになって久しいですが、精神科医のお仕事というのは本当に多くの職種のスタッフが関わっています。コミュニケーション能力が重要なのは大抵の仕事に言えるでしょうが、とりわけ精神科医療では、患者様の生活全般を支えるという使命のために、関わる職種の広さでいえば他の科の比ではありません。
例えば在宅の認知症患者様一人を支えることを考えても、ざっと思いつく職種だけでも、精神科医・内科医・(病院)看護師・作業療法士精神保健福祉士・介護支援専門員・介護福祉士訪問看護などの医療スタッフに加えて、日常生活を支える患者の家族や親族、他にもこれらの調整を支えてくれる地域自治体(市役所など)の事務職員などなど――非常に多数の関係機関や専門スタッフが関わっています。精神科医はその中心として彼らをまとめ上げて、支援のプランを組み立てていくことが求められます。
そうした業務を行う中で、人付き合いが苦手であることはかなり負担になると思いますし、苦手なままでは済まされない問題でもあります。

自身が精神障害、メンタル面の問題を抱えている方

特別向いていないというわけでも無いでしょうが、少なくとも精神障害を抱えていることが"有利に働くことは無い"くらいの意味です。これについてはスレでお答えするたびに大いにバッシングを受けるのですが、事実だと思います。
精神科を目指しているという学生の「自分も精神障害を抱えているので、同じような患者さんを助けてあげたい」とか、「(そうした経験があるから)自分は共感力が高い」「病気の人の気持ちがよくわかる」というアピールをよく見かけます。こころざしは立派だといつも感心していますが、残念ながらそれは誤りです。自身がメンタルの問題を抱えているからと言って、患者の気持ちが分かることはありません。
人間は100人いれば、その考え方も感じ方も千差万別です。あなた1人の経験はあなた固有のものであって、100人の患者さんにそのまま当てはめることは出来ません。もしかしたら100人に1人くらいは自身の経験とごく類似した考え方をする患者に遭遇するかもしれませんが、精神科医は残り99人にも同じように対応できなければいけません。無理に自身の経験を当てはめようとすれば、必ず致命的な誤りを犯します。
またそもそも、精神科医が扱う病気の種類は膨大です。主なものだけで数十種類はあります。よしんば自身の経験が一つの病気の対応について何か良い影響があるとしても、それは精神科医としての仕事のごく一部に過ぎません。

あとは私の個人的な経験則ですが、この手の『想いが強すぎる』方は、自分は患者さんの気持ちがわかるという勘違いから、ろくに勉強をしないまま、我流のへんてこな治療を続けてしまう人が多いように思います。ひどい場合だと、正しい治療を知っているのにも関わらず、敢えてそれを外して「自己アピール」をする人さえいます・・・若干の偏見が入っているかもしれませんが。当たり前ですが、精神科の治療にもセオリーはあります。フィーリングや我流は許されません。

"霊感がある"方、"霊能力をお持ち"の方など

いわゆるスピリチュアルな能力に長けているという方について。霊感や霊能力というものがどのようなものなのか私もよくわかっておりませんが、精神科医療はあくまで「医学」という学問の延長ですから、霊感や霊能力は使いませんし、使ってはいけません。
実際世の中には、こうした能力を活かして、我々が"精神疾患"と呼んでいる状態を改善させようとする方もおります(いわゆる祈祷師や霊媒師)。ただしそれは医療では無いので、精神科医の仕事ではありません。
そういう意味で、「不向き」なわけではありませんが、少なくとも"霊感"や"霊能力"は精神科医の仕事の助けにはなりません。
仮にそうした能力を持っていたとしても、精神科医としてのお仕事は、あくまで霊感や霊能力抜きで行う必要があります。

精神科医に「向いている人」

逆に、精神科医に向いていると思うのはこんな人です。

地道な勉強を続けることができる人

精神科医というのは決して、何か特殊な能力をもった人だけが出来る仕事ではない、ということです。何か読心術のような超能力めいたものを身に着けた姿を想像されることが多いのですが、誰もそんな特殊能力は持っておりませんし、そんなものは必要ありません。
精神科医の仕事は「臨床医学」という学問の延長であり、「真面目に勉強さえすれば、だれでも精神科医になれる」ものであるし、実際そうでなくてはいけません。

なので精神科医になるのに、特別な素養や能力は必要ありません。しかし医学研究は日進月歩の分野ですので、たとえ学生時代に勉強したからと言って足りるものではなく、生涯にわたって情報のアップデートを続けていかなくてはいけません。こうした地道な勉強を続けていくことができるかどうかが、一番の「適性」ではないかと思います。(全ての科の医者に言えることですが)

ココロだけでなく、カラダの病気にも興味を持てる人

精神科医というと、内科や外科などの医者とは少し異質なイメージを持たれることが多いですが、どの科の医師であっても、免許をとるまではみんな一緒に、一般的な内科学・外科学など全身の病気について勉強しています。(逆に内科や外科の先生も、精神科の研修を一定期間受けています)
実際、精神科医も普段の仕事の中で、カラダの病気(内科的な病気など)を日常的に扱う必要があります精神疾患は「脳の病気」と考えられていますが、脳もカラダを構成するパーツの一部ですので、カラダの別の病気から影響を受けることもあるし、逆に影響を及ぼすこともあるからです。常に全身の病気について考えながら治療を行う必要があり、時にはその治療も行わなければなりません。
あるいは、精神科の専門病院というのはたいてい精神科医しかおりませんので、入院している患者さん達については、そのカラダにおこるあらゆる病気を、精神科医が責任をもって治療する必要があります。(あたりまえですが、精神疾患の患者さんもカラダの病気にかかります。)

そんな事情から、カラダを含めたあらゆる病気に興味を持てる方が精神科医として向いているし、逆に「私はココロの問題にしか興味ないんだ、カラダの病気なんか扱いたくないよ!」という方は精神科医には向いていません
そういった方は、心理学を学ばれるとか、心理士を目指すのが良いのではないかと思います。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
雑記:久しぶりの更新です。リアルお仕事が多忙で更新滞っておりすいません。例年だと年末年始に1本スレ立てすることが多いんですが・・・あまり期待せずにお待ち下さい。

精神科医が見た『ブラック産業医問題』弁護士提言への反論

本日のネットニュースで主要記事扱いにされている「ブラック産業医」問題ですが、たまたま昨晩『質問ある?』スレでこの話題をお話していたんですよね。紹介がてら、少しこの問題について触れておきます。

www.bengo4.com

私としては、企業に迎合する産業医を批判するこの主張は、片手落ちだと思うのです。
すなわち、ここではさも立派なもののように扱われている精神科主治医だって「金を出す者に迎合する」という構造上のジレンマからは逃れられないんです。

このニュース記事によると、この北神弁護士は、

産業医は10、20と掛け持ちすれば、高額な報酬を受けることができます。お金を出してくれる企業に迎合せず、診断を出すことができるのでしょうか。現状は、本人の良心に委ねられているだけで、産業医の中立性、専門性を担保する制度が存在しません」(北神弁護士) ※太字強調は著者編集

と指摘しておりますが、これって「産業医」を「主治医」、『企業』を『患者』に置き換えても文章が成り立つの。たとえばこう。

主治医は100人、200人と患者を掛け持ちすれば、高額な報酬を受けることができます。お金を出してくれる患者に迎合せず、診断を出すことができるのでしょうか。現状は、本人の良心に委ねられているだけで、主治医の中立性、専門性を担保する制度が存在しません」(>>1)

要するにね、主治医って中立じゃないんですよ。だって、主治医は患者から金貰ってるんだから。「患者迎合」です。
中立性を担保する制度が無いのは、主治医だって同じことです。

要するにこの問題は、

『休ませたくない(orクビを切りたい)企業&産業医
『休みたい(or休む必要がある)患者&主治医』

という、構造的な対立関係が背景にあるわけです。

一応断っておくと、明らかに医学的に不当な判断を『故意に』行うのは論外ですよ。それに、世の中患者に迎合する藪医者だけじゃなく、立派なプロ意識もってる医者もたくさんいます。
でもこの場合に悪いのは、たとえ医学的に正しい治療を行おうとする医師にとっても『長めに休職させとくほうが安全』というジレンマに陥ること。その辺の詳細は、記事の最後に、昨日掲示板に書いたレスを転載しておきますので御覧ください。

で、北神弁護士は以下のような提言を行ってるわけですが、

(1)復職の可否について、産業医と主治医の判断が異なる場合、産業医が主治医に十分な意見聴取を行うことを法令で義務化すること、(2)法令による産業医に対する懲戒制度の創設、(3)メンタルが原因による休職の場合、精神科専門医でない産業医が復職の可否を判断できないようにすること。

これって、主治医が中立であることを前提としてるんですよね。
主治医が中立ではない以上、この提言を実行した所で、問題の解決は図れませ・・・もとい、「患者側が有利な制度」にはなるかもしれませんが、公平性とか医学的妥当性が担保された制度にはなり得ません。

じゃぁ対策は何かと言われると、これも難しい。
パッと思いつくのは『しっかり治療して仕事に復職させる医師(医療機関)を評価する』仕組みを作ること。厚労省なんかは「医療機関毎の、治療患者の復職率を成績として評価するー」なんて阿呆なことをいかにも言い出しそうですが、当然こんな対策では何の役にもたちません。重症な患者は「受け入れ拒否」して軽症な患者だけ見れば成績は上がるのですから、重症患者が「難民」化するだけです。(※なお数年前のことですが、厚労省は『沢山の薬を使ってるのは医者が無能な証拠だから、罰として診察料安くするよ☆』という制度を本気で導入しました。沢山の薬が必要なほど重症な患者を診ている医師を労うという発想は無いのでしょうか?意味が分かりません)

正直、この問題はそう簡単に解決するものではないし、上で述べた通り北神弁護士の述べた対策も残念ながら本質的な解決にはなりません。

私程度の脳味噌では、もっとも手近で現実的な対策は、結局『医師個人の職業意識を高める』ではなかろうかと、精神論に行き着いてしまう次第です。

最後に、昨日の掲示板の記事を以下に転載しておきますのでご参考になさってください。

精神科医だけど質問ある? [無断転載禁止]©2ch.net

639 : 名も無き被検体774号+@無断転載は禁止2017/04/10(月) 00:18:35.16 ID:0uUS9I9P
主治医の先生って基本的には
患者の味方だと思うんですが。
産業医の先生は会社の味方ですか?

651 : ◆AMAPSYMEDPA1 @無断転載は禁止2017/04/13(木) 00:49:35.37 ID:rt/1Uis3
>>639
非常に難しい質問です。
(以下、社員=被雇用者=患者、会社=雇用者。ほか、用語の使い方は結構適当です。)


本来は「社員の味方」であるべき、です。
しかし産業医はその会社に雇われている身ですので、身も蓋もない言い方をすれば、会社にとって不利益なことをする産業医はクビになります。
そういう理由から、実際は(一般の医療機関に医師と比べたら)断然、会社寄りの立場だと考えたほうが良いと思います。


ただ、そもそも論で言うなら、会社は社員の健康を管理する義務があるから産業医を置いているのであって、この件について社員と会社の利害対立は無いはずなんですよね。
「社員の健康を守ること」=「社員の味方であること」は、基本的には会社にとっても社員にとっても有益なはずなんです。
本来は、社員の健康をまもりつつ、業務を最大限円滑にまわすための調整役として期待されているのが産業医です。

なのにこういう質問が出るのは、少なくない会社が、『病休の多い厄介な社員』のクビを切る役割を産業医に求めているからだと思います。
特に精神疾患においてですが、病気を理由に社員へ自主退職を迫ったり、(主治医からの診断書があっても)病休を認めない、逆に復帰を認めないなどの"いやがらせ"をしてるケースを時々見かけます。
非常に難しい問題です。


・・・とまぁ、ここまで穿った見方で産業医を叩いたんですが、これだとフェアじゃないので、普通の主治医についても平等にこき下ろしておきます。


たとえば開業医の先生の立場で考えてみますと、先生は当然儲かった方が嬉しいので、診断書を出したがります。
うつ病で休職したいんで診断書ください」なんて言おうもんなら、喜んで書いてくれます。診断書、あんな紙切れ1枚でうん千円ですからね。ボロい商売です。
あと、本当にうつ病の休職なら少なくとも2~3ヶ月は休職期間が必要なんですが、セコい医者は非常に短い期間の診断書を出したがります。2週間とか1ヶ月とか。
その方が、延長するときにもう一枚分金取れるから。1回の休職で2倍3倍(医者が)お得です。

それに、仕事させながら治療するよりも、とりあえず休ませちゃったほうが簡単だし確実です。働かせながら治療するってのは難しいものです。
もっといえば、休職したいと来た患者を「休むな働け!」と励ました末、患者が『先生にも見放されたので死ぬしか無い』なんて遺書でも残して自殺した日には、ワイドショーのトップ記事待ったなしです。遺族からの損害賠償請求も不可避です、たぶん民事では負けます。
医師にとって、ギリギリなラインを見極めて患者を働かせ続けることには、デメリットが大きすぎる上に、医師の自己満足以上の価値はありません。
一方、患者を休職させることで、医者にはメリットしかありません。


まぁ、つまりそういうことです。

過去ログまとめ① [2016/07/29-2016/09/25]

精神科医だけど質問ある? [無断転載禁止]©2ch.net
http://hayabusa8.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1469798291/ 
※この記事は、上記過去スレから一部抜粋・編集したものです。全体としての読みやすさを優先したために削除したレスが多く、意味が通りづらくなっている部分があります。不明な点があれば、上記過去スレを直接ご参照下さい。 
1: ◆AMAPSYMEDPA1 @無断転載は禁止
過去にも何回か同じタイトルでやってます。
お久しぶりの方はお久しぶりです。

前回ほどはスピード出ないかもしれないけど
細々やっていきますのでよろしくお願いします。

 

8: 名も無き被検体774号+@無断転載は禁止
薬一杯出して儲けるのやめてくんない?

 

16: ◆AMAPSYMEDPA1 @無断転載は禁止
>>8
「医者が儲けるために薬沢山出してる」みたいな風潮は解せぬ。
薬が増えて儲かるのは『製薬会社』と『調剤薬局』です。
最近は、なぜか薬が多いと、カウンセリング料が減算されるという謎仕様に―
 
4: 名も無き被検体774号+@無断転載は禁止
俺も精神科医なりたいけど大学の勉強とかやっぱきつい?
 
7: ◆AMAPSYMEDPA1 @無断転載は禁止
>>4
大学での勉強よりも、医学部入試の心配をして下さい。
入学出来た人なら、変な遊びにハマったり精神病まない限り、卒業は出来る。

私個人的には、勉強は高校受験が一番辛かった。
 
※以下クリックで続きを表示しますが、1000まで行ったスレですので長いです。何回かに分けて読むことをお勧めします。

精神科医から見た"認知症・運転免許"騒動

結論:本当に危険なのは認知症ではなく「高齢者」

相次ぐ高齢者の自動車事故。原因は「認知症」?

昨今、高齢者の自動車事故が相次いて取り上げられております。特にアクセルの踏み間違え、信号無視、逆走などで大きく報道されていますね。

そして批判の矛先は「認知症」へ。2017年3月には道路交通法が改正され、逆走や信号無視などの違反をした75歳以上に対して"認知機能検査"を実施、成績が悪い者には医師の診察を義務付けるとしています。

過去にも似たような騒動が「てんかん」で...

この一連の流れをみて思い出すのは、2011年栃木県鹿沼市でクレーン車が小学生の列に突っ込み死者6名を出した事故。これは患者が「てんかん発作」を起こした結果であると認定され、後の法改正の契機となりました。


ただ、これらの一連の流れが、精神科医としてどうにも腑に落ちないのです。

そもそも「認知症」とは?

認知症の定義はいろいろありますが、病気としての認知症の定義はこんな感じ。

DSM-Ⅳによる認知症の診断基準

  • 多彩な認知欠損。記憶障害以外に、失語、失行、失認、遂行機能障害のうちのひとつ以上。
  • 認知欠損は、その各々が社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こし、病前の機能水準から著しく低下している。
  • 認知欠損はせん妄の経過中にのみ現れるものではない。
  • 痴呆症状が、原因である一般身体疾患の直接的な結果であるという証拠が必要。

認知症|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省

もっと大胆に噛み砕いて言うと、

  • 物忘れや判断力の低下がある
  • 日常生活に支障があり、社会生活・職業遂行が困難である
  • それは脳の病気が原因であって、単なる加齢や他の病気の影響ではない

ちなみに、医者のいう「認知症」に"加齢による物忘れ"は含みません。
さて。この時点で冷静に考えればおかしなことに気づく。

認知症」患者が事故を起こす?

果たして報道のような事故の多くが、本当に「認知症」患者によって引き起こされているか、ってのは疑問がある。
もちろん認知症にも程度はいろいろあるけど、多くの認知症患者は、そもそも自動車運転が物理的に困難です。たとえば、鍵の開け方がわからなかったり、エンジンのかけ方・ギア操作がわからない、車庫を出る前に事故ってるとかね。そういう方が圧倒的に多いと思う。
一方、一連の報道に出る方は、普通にエンジンをかけて出発し、左側通行で概ね信号守って運転してるわけですからね。これは、本当に認知症なのかどうかも怪しいし、認知症だったとしても"軽い"部類だということは容易に推測がつく。
もっと言えば、「信号の見落とし」「ブレーキだと思ったらアクセルだった」などは昔から事故の主要な原因であって、当然ながら若い人でも起こす。別に認知症に限ったことじゃない。そうすると、『認知症患者が事故を起してる』という前提がどうも怪しく思えてくる。

認知症批判」は隠れ蓑??

そうやって順番に追ってみると、結局今回の騒動が標的にしてるのは、実は認知症患者じゃなくて、ただの「高齢者」だということが見えてくる。もっと具体的には、"加齢による能力低下"。当然ながら誰しも、加齢によって注意力や動体視力は確実に低下する。それが病的水準じゃなくても、瞬時の判断を求められる自動車運にとって危険になることは想像に難くない。*1

ただ、高齢者全員を一概に「能力低下」扱いすると、いろいろとよろしくない*2から、「認知症」というもっともらしい単語を全面に押し出してるだけで、実態はただの『高齢者狩り』に他ならないと思うんです。

精神科医のとばっちり

で、そんな"隠れ蓑"にされて迷惑を被ってるのが、精神科医をはじめ、認知症を診てるお医者達。今後は事故を起こした人が病院に送られてきて、『認知症かどうか』を診断受けるようにってことになってるけど、上で見てきたとおり実のところ求められてるのは、『運転に支障のある能力低下があるかどうか!?』なのですから。ですがね・・・

  そんなこと知らない。
  知ったこっちゃない。

医者が判断できるのは「病気かどうか」まで。

加齢による能力低下は程度の問題であって、当然誰だって事故をおこす可能性はある。なら何処で線を引くのか?何を基準に判断するのか?―それは政治的な判断であって、まったくもって医学とは関係ない次元のお話。そんな役割を医者に丸投げされても、正直困るのです。

実は上で挙げた「てんかん」騒動のときは、とばっちりで「統合失調症」や「躁鬱病」などの患者がやり玉にあげられておりました。*3その結果、一応ガイドラインこそ作られましたが内容は空虚で、はっきり言って役に立っていません。*4

『誰でも、歳取ったら、運転は辞めた方がいい』

ってことを正面切ってメッセージとして発信し続けないかぎり、こういう小手先の対処では問題は解決しないと思います。*5それどころか、多くの運転中の高齢者に対して「自分は認知症じゃないから運転しても大丈夫」という誤ったメッセージを与えかねない。
政治家さんは人気取りとか体裁を取り繕うだけでなく、有効性のある対策をとってほしいものです。

*1:よく見ると、一部マスコミでは"認知機能低下"と"認知症"いう表記を併記してるしてる。文脈的にはこの"認知機能低下"という用語が一番正しい。

*2:選挙対策的な意味で

*3:"てんかん"はON-OFFが比較的分かりやすい病気なので、行政的に基準さえ決めてくれればあまり問題にならない

*4:なので私は、これらの病気の方へはほぼ無条件に運転許可してます。だって運転不可と判断するガイドライン基準が曖昧すぎるんですもの

*5:免許の自主返納として、既に行ってはいるんですがね...