「精神科医だけど質問ある?」>>1によるブログ

2ch「精神科医だけど質問ある?」スレ主が、過去の質問をもとに"よくある質問集"を作ります

精神科医は黙って殴られてろと?-「精神科医にも拳銃」報道

精神科病院協会のお偉方が、機関紙で「精神科医にも拳銃を持たせてくれ」という部下の発言を取り上げたことについて、毎日新聞がこれを叩いている。

この意見は、現場の感覚としては特に違和感なく受け入れられるもので、おそらく少なくない精神科医療従事者が抱いている感想だろうと思います。

精神科医療は、治安維持の役割を期待されている

精神科医療は好む好まざるにかかわらず、社会の治安維持としての性質を持ち合わせています。それは「他人に害を及ぼすおそれがある」者を強制入院させる措置入院の条項を見れば明らかです。もちろんこれは、巡り巡って患者本人が犯罪を犯すという不利益を被ることを回避するためのものですが、それを理解しているのは精神科医療に関わる者くらいでしょう。最近ですと、相模原の知的障害者施設の襲撃犯に措置入院歴があると報道されたとき『どうして退院させた』的な意見が広く報道されておりましたが、これは国民が精神障害者に対する抑止力を、精神科医療に求めていることに他なりません。
相模原障害者施設殺傷事件 - Wikipedia

精神障害者は危険」は誤り、しかし「危険な精神障害者」は存在する

私自身、診察室で患者から刃物を向けられたことは1度や2度ではありません。素手で殴りかかられるくらいは割と日常的風景です。基本的に診察室は密室です。患者と医師の2人しかいません。一応、緊急時のアラームボタンはありますが、押したところで目の前の患者が切りつけてくる方が早いです。
しかしそんな相手でも、患者様は患者様というのが今の日本の医療です。こちらが少しでも暴力的な手段(たとえば椅子を投げつけてそのスキに逃げるとか)を取ると、あとからそれが医療機関として"不適切な"行動として扱われてしまうのが現状です。

医療従事者を守るという視点を持って欲しい

問題は拳銃という手段ではなく、「医療従事者を守る」という視点を少しでも持って欲しいってことです。実際、警察官などにくらべれば我々が遭遇する危機なんてたかが知れてますので、別に拳銃じゃなくてもいいのですよ。催涙スプレーでもいいし、他に何か相手をひるませる手段があるならそれで構いません。我々にも何か抵抗手段が欲しい、自衛することを堂々と認めて欲しい。
モンスターペイシェントの問題でも同じですが、『医療従事者は黙って殴られてろ』的な風潮には我慢ならない。ただそれだけです。

参考)精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

(警察官の通報)
第二十三条 警察官は、職務を執行するに当たり、異常な挙動その他周囲の事情から判断して、精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められる者を発見したときは、直ちに、その旨を、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければならない。

(申請等に基づき行われる指定医の診察等)
第二十七条 2 都道府県知事は、入院させなければ精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあることが明らかである者については、第二十二条から前条までの規定による申請、通報又は届出がない場合においても、その指定する指定医をして診察をさせることができる。

(判定の基準)
第二十九条 都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

最近こんな記事ばかりでスイマセン、ニュースを見ていて、これは書いておかねばと思ったもので。
もうちょっと真面目に病気の記事も更新せねば・・・