人を殺しても「おかしなふり」をすれば無罪ですか?
実に突っ込みどころが多い質問ですが、質問意図はたぶん下の2つでしょう。
『精神鑑定』で無罪?
これは定期的にマスコミを賑わす話題ですが、google:刑法39条ですね。
犯人に精神科通院歴があるとわかると、皆さん大喜びでこの話題を始めます。
詳細な説明*1は省きますが、よく誤解されている点についての指摘だけ。
「病気だから無罪」ではありません。
通院歴があるとか精神病の診断を受けているなどの時に、週刊誌等は患者の病名をとかくクローズアップしますが、実のところ、通院歴とか病名自体は裁判ではあまり問題にされません。重要なのは、その病気が、犯行時の判断にどのような影響を与えたかであり、病名や通院歴というのは、あくまで判断材料に過ぎません。
過去には、精神病に対する多分な偏見から、病名とこれらの判断が一対一対応になってしまい、『分裂病(統合失調症)なら何しても無罪』のような時期が、実際にあったと聞きます。しかし少なくとも現在の裁判では、そのようなことはありません。統合失調症患者だろうと、病気の影響外の行為であれば、当然健常者同様に罰せられる事になります。
精神科医を"騙す"ことは出来るのか?
これは、役者によるとしか言えません。
精神医学的な知識の無い一般人が、単に"キチガイ"を装おうとしても早々にバレます。バレる・・・という言い方が適切かはわかりませんが、少なくとも"病気のせいで犯行に及んだのでは無い"という程度のことは、すぐ見ぬかれてしまうと思います。
ただ、役者が十分に精神医学的な知識を持ってる場合、あるいはそうした訓練を受けている場合(!?)は話が異なり、特に短時間の診察であれば、騙し切れる可能性も無いとは言い切れません。ただし現行法で、本格的に『精神鑑定』が行われる場合、2ヶ月間、特別な病棟で常時周囲の目に晒される中で生活することになりますから、これを騙し通せるというのはもはや常人の域を越えてるように思います。そんな人がいるとしたら、責任能力とは別の意味で、やはりどこか病んでるのではないでしょうか。
*1:キチンと理解するには「責任能力」についての話をしないといけないので・・・興味ある方は以下リンク参照。刑法第39条 - Wikibooks